映画『灼熱の魂』(12外-4)
予告を観て「観たい!」と思っていたものの
すっかり出遅れ、気が付いたら最終週。
これは、もう無理かと、諦めていたら
また「映画の神さま」が微笑んで下さいました。
水曜までがんばったら、何とか仕事のめどが付き
お休みをもらう事ができました(しかも、ちょっと暖かい)
『灼熱の魂』(公式サイト)を観て参りました。
ネタバレはしていないと思いますが、ラストには触れています。
【母が、生き続けた理由とは。】
2月10日 名演小劇場にて
カナダに住む中東出身の女性ナワルが遺言を残して亡くなり
ナワルの子(双子の姉弟)が、公証人のところに呼ばれます。
ナワルは、その公証人の元で長年秘書として勤めてきた女性でした。
遺書には、埋葬の方法が指示されていましたが
それは遺族には、受け入れられない内容。
さらに、娘ジャンヌには「父を探せ」、息子シモンには「兄を探せ」
それぞれを見つけて、母が残した手紙を手渡したら
墓に墓標を建て、墓碑を刻み
二人に宛てた手紙を読んで欲しいとも、書かれていました。
父が生きている?兄がいる?
弟シモンは、今まで全く知らされていなかった事実に驚き、背を向けますが
姉シャンヌは、母の故郷へ行くことを決めます。
母の意に沿いたい、いや自分の事を知りたいと言う思いからでしょう。
そこで、ジャンヌは母の壮絶な半生に向き合わさざるを得なくなります。
異教徒を愛したために、悲しい運命に翻弄されたナワル
ひとりでは、到底背負いきれないと判断した姉は弟を呼びます。
母の人生を知ることによって、子どもたちもまた過酷な運命を知ることに。
そして、それでも母が生き続けた理由とは…
双子と言う設定がとっても素晴らしい。
「一緒にいる事が素晴らしい」~かけがえのない存在。
過去と現在が交互に語られる上に、場所もどんどん移動して
(しかも、母娘を演じている役者さんがよく似ている)
色んなシーンが出てくるのですが、その語りもとってもスムーズで
サブタイトルが、とても生きています。
昨年、私たちは「天災」によって深い悲しみを味わいましたが
この作品で描かれているのは、人間が引き起こした悲劇です。
「神も仏もない…」ましてや「鬼も悪魔も…」
一番醜く恐れるべきものものは「人間」って事なのでしょうか。
一緒に居てやれなかった事
迎えに行く約束が果たせなかった事
総ては、自分がいけなかったのだ。
最終的には、子どもへの深い深い母の思い(愛)が語られて
切なく、哀しいけど胸に来ました。
★★★★☆
もし、自分なら真実は墓場に持っていくのでは…
ストーリーは、決して「好き」とは言えないのですが
圧倒的な「作品の力」を感じました。
何か捕まえきれていないものがある気がして
「パンフレット」を買おうとしたら、売り切れていて残念。
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めちゃくちゃ良さそうですね!
力強い作品、熱のこもった作品に
惹かれる時期に突入しているので、すごく観たいです。
こちらは3月にやっとやってきます。
楽しみです。
投稿: ミニチュアガーデン☆わーるど | 2012年2月10日 (金) 23時45分
これは、是非是非観て頂きたいですね。
後で知ったのですが、元々日本でも上映されたことのある戯曲だそうで~
タイトルにもある通り、「熱」に関しては半端ない
でも、意外と芝居クサくないところも私は好きでした。
デンさんのレビュー、楽しみにしています
投稿: ほし★ママ。 | 2012年2月11日 (土) 09時33分
今晩は。
この映画は、「人間が引き起こした悲劇」が描かれており、まさに「圧倒的
な「作品の力」」を感じます。
ただ、見終わってから暫くしてよく考えてみると、確かに「最終的には、子
どもへの深い深い母の思い(愛)が語られ」てはいるものの、そして語った
本人は死んでしまうからいいようなものの、その語られた相手の双子の
姉弟は、そんなことを語られてもという思いにとらわないでしょうか?どう
して、自分らはそんなことを知らなくてはいけないのだ、知らなければそ
れで済んだことではないのか、と思わないでしょうか?
この作品は、母親を描くものであって、双子の姉弟はいわば狂言回しなの
だから、彼らのその後の運命は二次的なのかもしれません。
でも、明らかにされた事実が余りのものなので、どうしても彼らのその後に思いが行ってしまうのですが?
投稿: クマネズミ | 2012年2月18日 (土) 22時09分
こんにちは、いつもすぐにお返事を頂戴し恐縮です。
私の方は毎度リコメが遅くなり申し訳ありません。
確かにおっしゃる通りです。
狂言回し的な役割とは言っても
スクリーンに登場する時間は母と同じくらい多く
こっちとしては、双子目線で出来事を観て行くのですから
ふたりの事を考えたら、胸が張り裂けそうで~
だからこそ、最初は公証人も反対をしたんでしょうね。
そこ、目をつむってはダメ!と、お叱りを受けそうですが
ストーリーの違和感がありながらも
不謹慎ながら、「面白い」と、感じた事も事実です。
投稿: ほし★ママ。 | 2012年2月19日 (日) 17時38分