映画『酔いがさめたら、うちに帰ろう』劇場鑑賞。
西原理恵子さんと言えば、去年まで全く存じませんでした。
娘の家に行くたびに「ぼくんち」は読んでいたのですが
その原作者であることさえ全く知りませんでした。
でも去年、たまたま『いけちゃんとぼく』『女の子ものがたり』と
相次いで映画化された作品を拝見したら
現実の暗い面をしっかり描いてるんだけど、なぜか優しくて暖かい…
本作は、その西原さんの今は亡き元ご主人が
ご自身と家族を綴った原作の映画化(公式HP)です。
12月19日、シルバー劇場で観て参りました。
【帰るところがあるとわかった時の安堵】
戦場カメラマンと言う立場で見て知った数々の悲劇から
「酒を飲むことで逃避する」「酒の力で目を反らす」事を続けてきた塚原は
強度のアルコール依存症に加えて、体中がボロボロの状態です。
母親と二人暮らしの塚原ですが、実は彼には妻子が…
飲むと妄想に取りつかれ、暴れて暴言を吐く彼に妻は「別れる」選択をしたのでした。
それでも、妻は夫の非常時には必ず駆けつけます。
入院や治療を勧め、子どもと共に見舞って励まします。
子どもたちも、そんなお母さんを見ているのでお父さんが大好き。
妻子にも年老いた母のためにも治療を決意
精神科に入院をして治療を始める塚原。
入院生活の描写が、意外とユーモラスでいい流れを作っています。
担当医を演じる高田聖子さん、入院患者役のベテラン役者さんたちのキャラに
負うところが、とても大きいと思いました。
担当医は、妻に「アルコール依存症は誰からも同情される事のない病気」だと、言います。
また「悲惨なものを見たり聞いたりした人とその渦中にいる人とどっちが不幸か」と。
原作者の鴨志田さんが、同じ病気になる人がなくなるようにと思いを込めて
また、自分自身への強い反省を込めての言葉に思えました。
西原さんは、原作の映像化には必ずご出演されています。
それを「山村美紗作品の山村紅葉的ポジション」とおっしゃったって言うのを
何かで読んだんですが、「火サス」大好き人間としては、なかりツボ。
今作では、無表情で言葉を発する事のない女性患者が
夫のお見舞いに浮き立つ様子を見物する野次馬役です。
そのシーンで、一人寂しく「書」を続ける女性患者も描かれます。
心を病む者にとって、受け入れてくれる人がいることが
いかに大きな薬であるかを示しているシーンに思えました。
そして治療後、家族に受け入れてもらえて
穏やかな日々を過ごすことができた鴨志田さんは
妻西原さんへの感謝のこもったラブレターとしてこの作品を残されたのだと思いました。
(元)妻を演じた永作さんが、本当に素晴らしい。
その話し方、表情、目線総てから、この役に入り込んでる様子が伝わってきます。
浅野さんもいいですね~、ダメ男ぶりもいいけど
子どもと接すると急に目尻の下がった優しい表情になるところが、さすがでした。
~ * ~ * ~ * ~ * ~ * ~
わたしの採点 ・・・ ★★★★ (85点)
また、エンディングテーマが清志郎さんでした。
涙が止まらなくなるから「使用禁止」にして欲しい…
~ * ~ * ~ * ~ * ~ * ~
来年公開されることになっている『毎日かあさん』は
西原夫婦の物語をきょんきょんと永瀬さんの元夫婦が
演じることになって、話題になっていますね。
これを観た後で、公式HPの予告トレーラーを観ただけでウルウル~
西原さんからの「返歌」とも言えるこの映画の公開も今からとても楽しみです。
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» 「酔いがさめたら、うちに帰ろう。」 切なくて、心がホカホカする作品 [てるてるの小屋]
テアトル新宿で、「酔いがさめたら、うちに帰ろう。」を観ました。
西原理恵子さんの元夫の、鴨志田譲さんが書いた自伝的小説。サイバラさんの「毎日かあさん」と対をなす作品です。
映画化もそれぞれ行われ、年明けの2月には、小泉今日子さんと永瀬正敏さんのコンビで「毎日かあさん」が公開予定です。なんか、おもしろいですね。
こちらの作品は、鴨さんが主人公です。
居酒屋でビールのジョッキを飲みつつぶっ倒れてし..... [続きを読む]
» 酔いがさめたら、うちに帰ろう。 監督/東 陽一 [西京極 紫の館]
【出演】
浅野忠信
永作博美
【ストーリー】
戦場カメラマンとして世界中を駆け回ってきた塚原安行は、人気漫画家の園田由紀と結婚し子どもにも恵まれるが、彼のアルコール依存症が原因で離婚。やがてアルコール病棟へ入院した安行は、そこで出...... [続きを読む]
» 酔いがさめたら、うちに帰ろう。 [映画的・絵画的・音楽的]
ことさら「海老蔵事件」があったからというわけではなく、好きな俳優の浅野忠信が出演しているというので、『酔いがさめたら、うちに帰ろう。』を見に、テアトル新宿に行ってきました。
(1)浅野忠信については、『乱暴と待機』でその健在ぶりを目の当たりにしたばかりですが、今回の作品も、瞠目すべき演技を披露してくれました。
何しろ、10回目の吐血で、実家のトイレを血の海にしてしまうほど酷いアルコール依存症の男を演じているのですから!
すでに妻(永作博美)とは離婚し、子供たちとは週に1回会うことになっている... [続きを読む]
» 酔いがさめたら、うちに帰ろう。 [日本映画の女優たち]
現実と幻想とのはざまに存在するのは、最後の最後に帰る場所。それは家族のいるところ。
− 永作博美が見せる浅野忠信との相乗効果、さりげなく毅然と運命を受け入れる女性像 −
主人公の塚原安行(浅野忠信)は重度のアルコール依存症。冒頭からその酒浸りぶりが描かれます。
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突然、ぶっ倒れます。店員..... [続きを読む]
» 酔いが覚めたら、うちに帰ろう [シネマ大好き]
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人気漫画家・西原理恵子の元夫で戦場カメラマンの鴨志田穣が、自身のアルコール依存症の経験をつづった自伝的小説を映画化した人間ドラマ。重度のアルコール依存症になった男と、彼を支え続けた家族たちの日々を、『わたしのグランパ』の東陽一監督が丁寧に描き出す。身勝...... [続きを読む]
私も西原さん大好き!
日記に書いたけれど・・・試写会友人に本を借りて読みました。
ブログにも時々お邪魔してます。
映画は2本とも観たいと思っています。
彼女は吉祥寺に住んでいるので、逢えるといいな~と思いながら
いつも歩いています。(我が家は吉祥寺まで車で15分の距離です)
壮絶な人生ですが、平凡な人生を歩んでる私には少し羨ましい。
彼女のあの底なしのバイタリティと明るさは見習いたいです。
投稿: kei36tm | 2010年12月21日 (火) 20時11分
こんばんわ!
明後日、見に行く予定です♪
夫婦二人の演技がすごく楽しみです♪
西原さんは読んだことないですが、映画の方はちょこちょこ見てます。
「パーマネント野ばら」が好きです♪
『毎日かあさん』はいろんな意味でドキドキしますね
投稿: ミニチュアガーデン☆わーるど | 2010年12月21日 (火) 23時28分
サイバラさんの作品は、すごくくだらない作品がある中で、こころが洗われるような作品がありまして、いまやサイバラ・ブームですなあ。
心がホカホカしてくる作品ですね。
トラックバックさせてください。
投稿: てるてる | 2010年12月22日 (水) 00時10分
おはようございます!
いつも 新鮮な情報 ありがとうございます。
ママちゃんのブログ どんなに参考になってるか わかりません。
西原さんのドキュメンタリをテレビで観て 興味持ってました。
おかあさん 元ダンさんとの関係 個性的でありますが
これもありだよなあと思ったです。
もう一本 西原ファミリーの映画 封切されてましたっけ?
浅野忠信=元旦那役の。
どっちも観たくなったです。
投稿: まふゆ | 2010年12月22日 (水) 09時25分
☆kei36ちゃん☆
今日は妙に暖かかったですね。
風邪はすっかりいいですか。
西原さん、素敵な方ですね♪
今まで、ほとんど知らなかったんだけど
この映画を観てさらに「好き」になりました。
みんなが西原さんを好きになるようにと
鴨ちゃんは、原作を書かれたのかもしれませんね。
36ちゃんの感想も楽しみにしています
吉祥寺かぁ~、いいところ(みたい)ですよね。

36ちゃんちの近くに住みたいよ~
相変わらずお江戸に憧れています、半世紀生きてるのにねぇ
投稿: ほし★ママ。 | 2010年12月22日 (水) 19時37分
☆デンさん☆


映画にも行けるんですね~よかった
パーティーは残念でしたが、また機会はありますから~
主演のお二人はもちろんですが
他のキャストも、メチャクチャよかったです。
アシスタント役の市川実日子さんとか
医師役の利重さん、大好きな渡辺真起子さんも出てらっしゃるし
レビュー、楽しみにしています
投稿: ほし★ママ。 | 2010年12月22日 (水) 19時47分
☆てるてるさん☆
コメント&トラバ、有難うございます。
このブログのトラバって送れたり送れなかったり~
何かルールがあるらしいんですが、いまだ把握できていません
『パーマネント野ばら』~そうでしたね、てるてる「も一回作品」でしたね。
残念ながら見逃してしまったので、DVDレンタル予約をしています
どんなに辛かったり、きつかったりする日々を経験しても
心穏やかな時間を過ごすことができた~ホントにホカホカしました。
投稿: ほし★ママ。 | 2010年12月22日 (水) 19時56分
☆まふゆたん☆
嬉しいお言葉。
があったのだと思います。
あらら~、何と
土曜日、断捨離を決行して、テンション
日曜は、映画を観て、ウィークデーにはみなさんとおしゃべり。
自由気ままに生きてるおばちゃんですが、これからもよろしゅう。
そうですね、おふたりには愛情
でも、許せない事…でも、許しちゃう事・・・きっとありますよね~
『毎日かあさん』の方は、来年の2月が封切りみたいです。
地元のシネコンに掛るし、今から楽しみ
投稿: ほし★ママ。 | 2010年12月22日 (水) 20時18分
TB返し&コメントありがとうございました。
鴨志田氏がこの後、癌で亡くなっている事を知っているだけに
家族と波打ち際で戯れるラストシーンには救われる思いでした。
アルコール依存症による幻覚や幻聴、異常行動などの表現も斬新でしたね。
また遊びにきます。
投稿: 西京極 紫 | 2010年12月23日 (木) 19時22分
☆西京極 紫さま☆
ご訪問とコメント、どうもありがとうございます。
お約束のお別れのシーンがあるのかと思ったら
平和で幸せな家族の姿、暖かいけど余計に切なかったですね。
こちらこそ、またお邪魔させて下さい。
投稿: ほし★ママ。 | 2010年12月23日 (木) 20時06分
こんにちは!! うんうん 僕試写会で見た
これ 重い題材を ちゃんと エンタメ映画にした 監督がね
「クレイジーハート」「ばかもの」とアルコール依存症ね
高田聖子先生良かったですね。
投稿: saku | 2010年12月24日 (金) 22時54分
浅野忠信jは、酒びたりぶりといい、入院生活といい、なかなな見せてくれますが、
パートナーの永作博美が本作でも素晴らしくて、お互いに演技が、
さらなる相乗効果を生んだような気がします。
毎日かあさんも、キョンキョンなので楽しみです♪。
投稿: ふぁろう | 2010年12月26日 (日) 01時05分
☆sakuさん☆
当然、現実はもっと壮絶だったと思いますが
ちょっとしたセリフなんかでうまくカバーして
とっても暖かい作品にしていましたね。
『クレージーハート』も、ミリオン座に掛ったのですが
夏だったので見逃しました。
DVDで鑑賞したいと、思います。
投稿: ほし★ママ。 | 2010年12月26日 (日) 09時50分
☆ふぁろうさん☆
ちょっとお茶目な表情とか、ブラックな言葉とか
どれも永作さんが完全に自分のものにしてましたね。
浅野さんは、インパクトありそうで意外と
主演女優を引き立てる方だと思います。
キョンキョンもお茶目な役の方が好き♪
『毎日かあさん』~めっちゃくちゃ楽しみです!
投稿: ほし★ママ。 | 2010年12月26日 (日) 09時57分
あけまして おめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
今日、「酔いがさめたら、」観てきました。
たんたんとした静かないい映画でした。
「まだ死なないよ」サイバラさんの愛が溢れていた
当事者には その時より ひとり台所に居る時の方が 沁みるのかもと思います。
高田聖子、利重剛 両先生 よかったです。
西原先生 患者のひとりだったのね、、、見送るひとりか~
投稿: まふゆ | 2011年1月 3日 (月) 19時51分
☆まふゆちゃん☆
あけましておめでとうございます。
すっかり出遅れ、ご挨拶も今頃で申し訳ありません。
こちらこそ、今年もよろしくお願いします
今年、
初鑑賞でしょうか!?
そうでした、あのキッチンのシーンは切なかったです。
そして、ラストに海のシーン
家族の愛を実感できて、短いけど幸せな人生だったと言えるのでは…
両先生がよかったですね、実際相当な人格者でないと
ああ言う患者さんたちを抱えては大変だと思いました。
投稿: ほし★ママ。 | 2011年1月 7日 (金) 17時15分